<引用> 日本経済新聞(春秋) 2019.2.24 小林勝 
日本経済新聞・春秋 2019/2/23付 

りゅうぐうに弾丸を発射した「はやぶさ2」の話題

 

<引用>

日本経済新聞

春秋 2019.2.23付け

「はやぶさ2」の話題

 

 

今から46億年前。宇宙空間に漂っていたガスやちりが、自分の重さで集まり、次第に回転運動が起きた。やがて中心からは熱いガスが噴き出しはじめる。太陽の誕生の姿だ。その周囲を回るガスやちりも、次々に衝突や合体を繰り返し、後に地球などの惑星へ成長した。

▼子ども向けの図鑑を要約すると、こうなる。つまり、太陽系に浮かぶいびつな形の小惑星には太陽や生命誕生の謎が数多く潜むのだ。その1つ「りゅうぐう」に日本の探査機「はやぶさ2」が着陸、岩石を取るための弾丸発射も成功したようだ。初代「はやぶさ」と同様、サンプルを持ち帰ってくることへの期待が高まる。

▼地球から3億キロメートル以上と、月までの距離の約800倍に及ぶ。通信のやりとりだけで40分もかかるのだとか。そんな宇宙の遠くで、管制や自動運転を頼りに直径6メートルの小さな的を狙う技術に改めて舌を巻く。「人類の手が新しい小さな星に届きました」との責任者の喜びの声は、新たな名言として歴史に残るかもしれない。

▼はやぶさ2は、さらに岩石採取に挑んだ後、そろばん玉に似た星を離れ地球へ向かう。帰還は来年末という。そのころ東京五輪はとうに閉幕している。景気は冷え込んではいまいか。安倍首相の任期も1年を切り、政権運営はどんなだろう。そして米中関係は。種々の俗事の予想しがたきこと探査機のミッション以上なり。